なんのために。

春先に本が出る。名古屋の友人の会社が発行する本で「リハビリテーションスタッフの為の起業マニュアル」というタイトル。原稿依頼を受けていて、年末年始を返上して書こうと思い、机に向かっているものの、ちぃとも筆が進まん(筆では書いてないけど)。



僕はデイサービスを担当するコトになっていて、事業計画や資金調達、営業広報、立ち上げから運営、事務実務からスタッフ教育まで書かなきゃいけないらしい。確かにマニュアルだから見出しも当然のコトなのだが、今更ながら「なんために?」という所で原稿はストップしているのだ。



最初を始めたきっかけを作った当事者は僕なのだが、実際けしかけた張本人はどこへやら。交わす言葉と合わないタイミングにも時間の経過、過ぎた月日を感じる。デイは始めてからもう十年になるな。今回の原稿は2カ所を立ち上げたその十年を見直す良い機会かなと思い引き受けたものの、超ヘビーな仕事になってる。



目次の中の「はじめに」には「なぜするのか?どこでするのか?」と書いてある。



当時はそんな大それたコトは言えなかったのが、実は「街を、創り直そう」と思ってた。健康や長寿のイメージを軸とした自分の場所が起点となって、そこから地域の色々な要素を線でつなぐ。僕の場所は電源コンセントみたいなもので、スイッチを入れて地域に電流を流し、街に電気を灯しもう一度明るくしようと考えた。



日々生活者と生きていて、医療が終わって生活に帰った時に僕に出来る事が何かを探した。その時に気づく。僕は、電流を流すどころか電力を供給するシクミやシカケすら知らずにいた。だから、一から勉強をし直した。そこで出会ったシクミとシカケが、地域リハというカンガエカタであり、THSという設計図だった。



デイサービスは、賃貸であろうが所有物件であろうが物質として存在する。つまりは場所(空間)であり、その場所を創る理由がリハビリテーションとして事業を行うコトであるならば、その場所(空間)が「街づくり」まで意識したデイサービスであるかどうかなのである。集める為だけのデイならば、リハはなくてもいいからだ。



デイサービスに集う人達は「地域の人」なのである。その土地に長年住んでいる人だ。家族やご近所と共に時を経て、その地域と共にライフサイクルを経て、年老い、何らかの理由によって支援だの介護だのと区分をされた結果、僕の場所に集ってくれた「地域の人」なのだ。



事業として、金の為にやるのなら他の業種の方がいいだろう、もっと儲かる仕事はあるはずだ。ではなぜ、デイサービスをやるのか?と問われたなら、僕は「地域利益」の為だと答える。事業をやる以上、利益は最重要事項なのだが、問題はその利益の考え方なのだ。単に金銭で片付けられない利益が地域にはある。僕はそれを「地域利益」と呼んでいる。



地域利益とは、僕らセラピストを含む働く個人にも、顧客でもある利用者にも、場所を作る為に金を使う組織にも、そして少子高齢化が問題と叫ぶ社会にも、それぞれに何らかの利益が享受される状態を作りつつ、ミソは、それぞれの利益を「循環」させて、それぞれの利益を「増幅」させていくシクミとシカケだというコト。



デイサービスという事業は、場所(空間)を作るコトだ。集まるか集める、その為だけの場所であれば別にリハビリテーションは無くてもいい。ただ、場所(空間)づくりを、デイサービスという業態を使って、リハビリテーションとしてやるのであれば、それは「街づくり」を意識しなくてはいけない。



集う人はそこに住み慣れた「地域の人」である。いつまでもいきいきと自分らしく在りたい、今のご時世、そう思っているのが本人であっても周囲であってもそれはよい。ただ、デイサービスの事業運営をリハビリテーションとして行う場合には、個人の身体能力の向上は勿論として、地域自体への効果も示すコトが重要だ。



その土地で、リハビリテーションを専門とするセラピストがデイサービスの事業を始めるという時。



顧客への利益は身体機能の向上や活動性の担保と考える。それが出来る事は、セラピスト個人の成長の物差しであり、それが結果、次の顧客を生むコトにもつながる。



顧客が増えるというコトは、顧客に何らか満足を与えているのである。それが量か質かはそれぞれの価値基準にうよる所でもあるが、とどのつまりは顧客の利益として満足を与えるコトが出来れば顧客は増える。



顧客は組織の利益を生む。顧客が増えない所は、セラピスト個人の質の問題か、顧客に受け入れられていない何かがあるからだ。組織として適正な人を配置し、顧客の満足に真摯に向きあえば組織は利益を得るはずだ。



デイサービスをリハビリテーションとして行う場合に、その存在意義には予防は自立があるはずだ。顧客や利用者を悪くしたくて始めるデイサービスは無いという前提で、その存在は社会全体の利益を生むコトにつながる。



そして上記の4つの利益を結ぶのが「時間(機会)」と「関係(つながり)」なのである。地域との出会いの機会や専門職同士のつながり、同業他社との連携や地域資源と接点、社会全体との情報共有。ここから派生する話はすでに地域リハビリテーションへと進む。今回の依頼とは趣旨が少し異なる事もあり、その説明や方法論の話は別の機会に委ねたい。



そこに住む人々が、その人らしくいつまでも住み慣れた環境で「生活」していく為には「街づくり」をやらなくてはいけない。街づくりとは、そこに住む人々全ての理解や協力を得なくては進まない。だからこそ、地域で利益を共有しなくてはいけない、共有されるのが「地域利益」でなくてはならない。



リハビリテーションの専門家が、地域、デイサービスという事業を始める時。その目的としては「地域利益」を追求し「街づくり」に貢献するコトだ!そう強く言い切ってほしい。


…なんか最後は原稿口調になってしまった。
まぁ、いいや。そのまんま使えそうだしね。

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