潮目。

先月から都会にセミナーに通っている。テーマとなる領域というか分野というか、その頭文字をもじったセミナーのタイトルとなっている。集まりには少々いぶかしげな印象をもったが、紹介者はお堅いところの人でもあったので参加した。そして一昨日は、その2回目だった。


色んな人が16人ほどいる。医療コンサルタントという方が居た。今回のグループでは僕の正面に座られた。朝、席に着くと彼はタブレットを見始めた。セミナーの始まるまでの時間、デジタル漫画を読んでおられた。


彼の自己紹介を思い出した。素性はよく知らないが、自分で立ち上げ社長として長年勤めた会社を追い出されたと話してた。話し方と繰り返しの表現で遺恨がわかった。割と表情は穏やかだ。世の中の隙間であることは灰色であり、攻撃的な姿勢は赤だと思うのだが、一方でその両方が入り混じった雰囲気がある。きっと素晴らしいアイディアを持ってて、スゴい行動力を兼ね備えていた結果なのだろうと考えた。


セミナーではセッションをする。アイディアシートを書き、持ち寄って表現し、お互いにツッコミ合えという指示がなされる。知らない人が何を考えているのか聞いてみたい。純粋にそう思って聞き手に徹した。考えられた話は使う言葉に魅力が出る。彼のアイディアを聞かせてもらった。アイディアが深掘りされ、行動が大事されているかどうかは、その人の言葉でわかる。彼の話はそれぐらいにしておこう。


セッションでは順番に話す。僕も受講生の一人だから話す順番が来るのだ。僕もちゃんと考えてきた話をする。特別な空気を作ろうとするでなく、ありのままを話す。話終わる。空気変わる。また言葉を探す。


身を乗り出してくる。講師からは「それってさ、それッぽいよね」と評価を頂く。周囲は熱を帯びる。それでいくかという空気になる。誰かが言う。国の責任者は誰だ。そういう奴らは自分の事だけだ。こうしろ、ああしろ、そしたらその間違った仕組みを正す事ができるぞと助言をくれる。


たとえば、僕がiTherapyを創ったのは、誰かを攻撃して何かを認めさせたいからじゃない。手段の流れに向きを与えて「潮目」を作りたいからだ。違う街に関わりを作ってるのは、地域の潮目を作るためで、その潮目には人が集まるからだ。それ以外もすべてそう。強い意志のあるところで、変えていく時にはすべてに意味を作ってる。ただ、僕は神様じゃない。意味は先に理屈が立つ場合もあれば、後付けになる事もある。陰日なたなく、それで非難される事もしょっちゅうだが、社長業と非難はセットメニューとして腹ぐくりはとうの昔に出来ている。それよりも僕はもうちょっと考えたい。


潮目ができれば魚は餌を求め集まる。そして集まった魚を採って暮らす漁師が居る。これは双方必然で双方何も悪くない。潮目は荒れるが、良い漁場だとはみんな知っているから荒れるぞ荒れるぞと脅される。知らねーぞと揶揄される。どーぞお好きにご勝手にと無関心も漂う。変わる側の流れと、変えられる側の流れはそれぞれ逆を行くからだ。そして僕は、集まるでもなく、採るでもなく、流れをそのものを作る仕事がしたいと考えている。集まる理由も採る理由も大事だし、正しいから、潮目を作って「海」を人の暮らしにもっと良い環境にして、魚も漁師も助けたいと考える。変える理由はそれがすべて。


2回目はそんな短編映画を見るような雰囲気だった。でも、気分は悪くなかったな。自分がやろうとしている今は潮目を作る事が必要な時期だと思っているからだ。彼の事も面白い人だと思えた。


口で言えば「潮目を作る」というだけだが、そんな簡単じゃない。


やれるもんならやってみるといい、大変だから。


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